その日の夜遅くなってから、かぼちゃ組はポワンについた。

宿屋の看板が有る店に入ると、ベットなどはそのまま置かれているが、誰もいない。

「・・・俺が人間だった頃ここに来た時は、確かにここに宿屋が有ったはず・・・。」と、キバ。

「まあ、今日は夜遅いし、勝手に泊まっちゃおう?」と、ぴあがいった。

「そやな。」と、金剛。

 

 

 「起きてください!」と、誰かに起こされてすいか組は目を覚ました。

「うーん・・・あ、もしかして宿屋の主人ですか?ごめんなさい、代金なら今払いますから、見逃してください。」と、南はあわてて言った。

「いや、私は宿屋ではありません。この町の道具屋です。」と、南を起こした人はいった。五十歳くらいの男性である。

「道具屋さん、この町は一体どうしたんですか?」と、南は訊いた。

「・・・見てください。」道具屋は窓の外に目をやった。昨日は暗くてよく解からなかったが、外の光景は異様なものだった。

町中に「すいかが食べたい」と書かれた垂れ幕、「すいかが食べたい」と絶叫する人々。「すいかが食べたい」慣れしている(?)西瓜太郎の息子・南ですら気味が悪いと思うような光景だ。

「この村は、オークションで栄えた平和な村でした。・・・20年前までは。20年前、私は仕事で店にいたのですが、オークションに初物のすいかが出品されたのです。

今となっては、そこで何が起こったのか語る者はいないのですが、突然オークション会場からもの凄い閃光が発生し、その閃光に当たったものはみなすいかが食べたくなってしまったのです。

私はとある青うさぎのおかげで自分を見失わずにすんだのですが・・・。」道具屋は語った。

おそらくとある青うさぎとは、ぴあの父・うなだろう。うながいてすいかが食べたくなるということは、太郎に関係ないわけがないとキバは思った。

「あの工場は?」ぴあが訊いた。

「ああ。実は、数年前に、ここの隣国であるクレモンですいかが見つかったんです。

しかし、困った事にそのすいかは逃げ回るらしいのです。

そこで、ポワンの国王・・・前国王・初物大王の息子・すいか大王が、

「止まる息」のガスを詰めたミサイルを開発しました。

あそこはそのミサイルを製造する工場です。」と、道具屋。

「・・・停止させたすいかは?」と、ぴあが質問を続ける。

「食べるんですよ。みんなで。」道具屋が言った。「ミサイルの発射は今日。この町の東の塔からうつらしいです。」

 

道具屋がさってしばらくした後、南はキバが小刻みに震えている事に気がついた。

「・・・俺が剣になった後に魔女の元に現れた人間は皆、太郎によってすいかに変えられた。おそらくクレモンのすいかはみんなそいつらだろう。俺も・・・一歩間違ったら今頃・・・。」

「や・・・やっぱり原因南君のお父さんかよっ!?」ぴあがビビりながらツッコミを入れた。耳がピーンと立っているのは、ツッコミを入れるときのぴあの癖らしい。

南は思った。一歩間違ってたらキバが巻き込まれていたかもしれないし、おそらくこの事件の原因は自分の父にある。

だったら止めなくてはいけないのだが、それよりも今は早くかぼちゃが食べたい。

竜の玉を狙っているのは、自分たちだけではないかもしれないのだ。こんなところでのんびりしていたら先を越されてしまうかもしれない。

それに、自分たちがいってミサイルに太刀打ちできるかどうかもわからない。

だからといってほうっておくわけには・・・

ぴあもおそらく、止めるべきだという意志とミサイルへの恐怖の間で迷っているのだろう。黙りこくっている。

そんな時、真っ先に口を開いた・・・いや、彼に口は存在しないからこの表現は適当ではないかもしれないが・・・とにかくしゃべったのは金剛だった。

「な、ミサイル止めへんでもええんか?」と、金剛。「俺らの目的は、竜の玉を集めることやろ。となると、この大陸を一通り探さんといかん。そのためにはクレモンも通らんといかんけど、

そこに止まる息のガスが充満していたら、先に進めへんやろ。」

確かに、彼のいうことはもっともである。

「でも、ミサイルに勝てるかどうか・・・」と、ぴあ。

「ぴあ。こんなとき、うなならなんていうと思う?」金剛がやさしく訊いた。

「――『その消極的な性格を直さないと、先には進めないぜ。』――。」キバは、いつかどこかで訊いたうなの言葉を思い出して、小さくつぶやいた。

「ほな、決まりやな。」と、金剛。

「よしっ!ミサイルの発射を止めに出発だ!」と、南が言った。

こうして、かぼちゃ組はミサイルの発射を止める事になったのだ。

 

次回予告

うな「書いた当時の時事問題が伺える内容だな。この章書き始めたの、北朝鮮のテポドンが話題になってた頃だろ?」

かるび「テポドンは食べられますか?」

うな「食うなっ・・・、と、言いたい所だが、お前ならがんばれば食えそうだし、いっそ戦争で使われる前に食ってくれ。」

太郎「すいか大王って・・・」

うな「すいかが食べたいの世界だけあって、すいかなんとかって奴たくさんいるよな。西瓜太郎、すいか様、すいかの星、すいかランド・・・。」

かるび「すいか夫人もいましたね。」

うな「そのことはもう思い出させるなっ!次回は『試練の塔での決戦』だっ。」